※なるべく気を付けたいと思いますが、ネタバレが含まれますのでご注意ください※
ミステリーの女王として有名なアガサ・クリスティー。
特に名探偵ポアロやミス・マープルシリーズが有名かなと思います。
私はノン・シリーズと呼ばれる、ポアロもミス・マープルも登場しない作品もお気に入りで、
『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー著、中村妙子訳(ハヤカワ文庫)
こちらを紹介したいと思います。
怖い本
『春にして君を離れ』はいわゆるミステリーと聞いて想像する話とは趣が違いますが、ひとの心理や精神のミステリーというのでしょうか、私はこの作品を読んだときとても怖くなりました。
物語としては場面の変化は少なく、ヒロイン目線の心理や記憶の描写で進行します。
そのヒロインの心では開いては閉じ開いては閉じ、劇的(だと私は思いました)な変化が訪れます。
その心の変化によって何かが変わるかと思いきや、変わらせてはくれないことが怖い(;··)。
ヒロインは分かりづらい人生の岐路にあって、
生まれ変わるきっかけを逃してしまい、永遠に(とは描かれていませんが)その機会を失います。
そしてそのような岐路は、私たちにもそれとはっきり気づかぬ間に遭遇しうると思われるのです。
私はそれに気づけるのか、これまで何を選んできたのか…
ちょこっとあらすじ
ヒロインは40代のイギリス人女性、その夫は弁護士事務所を経営している比較的裕福な家庭、3人の子供は皆結婚しています。
一般的に見れば幸せな家庭、ヒロイン自身も自分は幸せだし家族も幸せで、家族を愛し愛されていると思っています。
しかしイギリス⇔バグダッドの一人旅で偶然旧友に会ったことをきっかけに、本当に家族は幸せだったのか、自分は何をしてきたのか、過去の記憶が次々と蘇ります。
過去を振り返る中で、気づきたくないと無意識に蓋をしていたことに気づいていくのですが…。
わが身を振り返る
物語としてとてもおもしろいので、あまり教訓めいたことにしたくはないのですが、
・周囲と自分の状況を真正面から捉えられているだろうか
・自分が楽になるために、周りの大切な人を不幸にしていないだろうか
・大切にしているはずなのに、気づかないふりをしていることはないか
まじで気を付けなければ、、と私は感じました。
ただ読者側の考え方やバックグラウンドによって、感じ方が全然異なる本ではないかなと思います。
何が怖いかわからん、また別の部分が引っかかるといった方もいるでしょう。
友達など周りの人と感想を言い合ってもおもしろそうですね。
コメント